2025.8.3みことばの光


 8月は平和を祈る月間として『善き力にわれ囲まれ』を一ヶ月間賛美していきましょう。この賛美歌の歌詞はD.ボンヘッファーによって書かれました。
 彼は1906年2月4日生まれ、1945年4月9日に亡くなっています。ドイツ、ルター派教会の牧師で20世紀を代表する神学者でもありました。ナチスに反対し、ヒトラー暗殺計画に加わり、別件で逮捕された後も著述活動を継続しました。その後暗殺計画は挫折、ドイツ降伏直前に、処刑を急ぐナチスによって絞首刑となりました。ベルリン州立図書館の一階には、絞首台のロープが首にかけられたボンヘッファーを描いた大理石の胸像が展示されています。
 この賛美歌の原詩は1944年12月28日付けの母親宛の手紙に記されています。プリンツ・アルブレヒト通り、彼は秘密国家警察局で留置されていました。翌年の4月に処刑されたことを知っている私たちは、彼がどれほどの絶望的な状態に置かれていたのかと想像するのですが、むしろ彼は希望に満ちていたようです。確かに戦局はドイツ優勢のまま進むとは思われない。むしろ敗戦色濃厚な中で、彼らはどのように敗戦を迎えるべきかを選びとった人々であったとも言えるでしょう。
 伝記などの資料によると、ボンヘッファーの受容そのものが、戦後70年の歴史の中で変化し続けるものであったことも教えられます。戦争直後は、当時の政権に真っ向から逆らったのですから、彼を評価する人は決して多数派ではありませんでした。むしろ連合国のキリスト教会の中で彼の評価は先に高まったのだと言えるでしょう。そしてドイツ人もあの恐ろしい時代の中で正気と正義を見失わなかった同胞を、次第に受け入れることが可能になったのだと思われます。
 この賛美の歌詞は、復活の主イエスの御言葉の約束が一つの源流になっているのではないでしょうか。それはマタイの福音書28章20節「見よ。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたとともにいます。」です