2024.3.10みことばの光
先週の祈祷会は詩篇47篇を呼んで聖書の分かち合いを行いました。詩篇47篇と言えば「幸せなら手をたたこう」1964年に坂本九ちゃんが歌って大ヒットした、童謡としても親しまれている歌の作詞のきっかけとなった聖書の言葉です。この誕生物語が漫画になって今年1月出版されたので、改めて経緯や背景を知りたいと思い購入しました。
著者は西岡由香さん。1965年生まれ。長崎を拠点に原爆や戦争、歴史をテーマにした漫画に取り組んでいるとのことで、他にも興味深い作品をいくつも出版しているようです。
牧師が注目したのは、作詞者木村利人さんが、どのような状況下で詩篇47篇の御言葉に教えられたか、ということです。聖書を開いているシーンは97ページに書かれてありました。きっかけは25歳、フィリピンのダグパン市ルカオ村のワークキャンプに参加した時のこと。戦争の爪痕に気づかされ、彼はフィリピンの友人を通して、村人を通して、そこで何があったかを知り、大変な衝撃を受けます。一時はキャンプ途中で日本へ帰ることも考えたようです。しかし眠れぬ夜に聖書を読んでいると詩篇47篇があり、御言葉の通りに手をたたきました。その音が、起きてきた友人の耳にも届いたことを確認すると、音を出すこと、態度で示すことの大切さに気づいたようです。心の中で思っているだけではダメ。それから人一倍働いて、戦争の被害を受けた人たちへのすまないと思う気持ちを態度であらわそうとしたようです。
彼らの働きぶりが話題になり地元のラジオ放送に取り上げられます。彼はとまどったことと、だからこそ心の中に与えられた思いを態度で示そうと考えたことを語り、番組はルソン島全域に放送され、大きな反響を呼ぶことになりました。打ち解けた交わりが与えられ、後に歌詞のつけられる童謡も聞いたようです。
彼は再建中の教会の基礎に手形を求められます。戦時中、村人が集められ、閉じ込められて、火を放たれた教会でした。牧師は堤岩里教会事件は知っていましたが、同じような事件が他の国でもあったということは知りませんでした。村人たちの願いは、和解と共生を誓う彼の手形とメッセージを教会に残してもらいたい、それを自分たちの新しい土台としたいとのこと。彼らは態度に表された気持ちを、確かに受け取ったのです。
「幸せなら手をたたこう」。
日本の国は敗戦したにもかかわらず、復興と経済成長をゆるされました。戦争の加害者であったにも関わらず、という意味も含まれているのかもしれません。心からの思いを態度に示す時に、それは伝わり、共に生きる本当の力になる、そのことを教えられた学びとなりました。