2025.5.11みことばの光


 111篇の特徴は冒頭にハレルヤ(主を賛美せよ)の句があること。詩篇はこの後150篇までハレルヤの句が次第に増えて行きます。「苦悩を突き抜けて歓喜に至れ!」とは楽聖ベートーヴェンが語った言葉。その通りに彼の代表作品には人生の苦悩を突き抜けて歓喜に至る運命交響曲や第九があります。ベートーヴェンはそもそも、「最も秀れた人々は苦悩を突き抜けて歓喜を獲得するのだ」と述べたとか。詩篇全150篇の流れもそのように捉えることができます。

 また詩篇111篇はアクロスティック詩篇という形式上の特徴があります。ヘブル語のアルファベットが各行の頭にあり、その順で言葉が紡がれている。それで思想は前後するのですが、主題は徹底して陳述されます。111篇と112篇が対になっており、111篇は神の『みわざ』について112篇は神の『人』について。みわざ、御業と日本語で書くと、神の行いという意味が強くなりますが、聖書における”みわざ”は神の被造物(creature)が中心。それに加えて、創造のみわざ、また保持のみわざ、救済のみわざとなるでしょうか。

 2節の聖句は英国ケンブリッジの物理学研究室の入り口に記され、その部屋では数多くの重要な発見がなされたと言います。聖書は、世界が、神によって美しく造られたと語り、その信仰は科学の探究を後押ししたと言われます。西洋文明において科学が発達したゆえんです。高度な文明は他の世界にもありましたが、キリスト教世界以外の諸宗教の世界観は、世界をそもそも混沌と捉えるものであり、科学的な探求の動機は後押しされなかったのです。

 信仰者はこの世のすべてのものが神によって造られ、保持されていると信じます。そこにあるのは無秩序ではなく、神の威厳と威光。この神は4節、情け深く、あわれみ深い神なので、私たちは、暴風に吹きさらされるだけでなく、守られて生き延びることができる。いや、豊かな恵みの中で幸せすら享受することができるのです。9節には、罪ある世界に贖いを送られる

 神の救いの計画が予示され、キリストにおいて実現しました。結論は10節、主を恐れることが知恵の初め。すばらしいみわざによって私たちのいのちを支えておられる神を知る、これが知恵の初め、私たちが最後に歓喜に至る秘訣なのです。