2024.5.5みことばの光


 先週の祈祷会は「聖書に聴く」。出エジプト記20章、十戒授与の場面でした。20章3節は第1戒です。「あなたには、わたし以外に、ほかの神があってはならない。」天地万物の創造主なる唯一のまことの神のみを神とし従う、この教えの現代的な意味について、先週紹介されていた図書が深く関係していましたので、読ませていただきました。ハンス・マイアー著、河島幸夫編訳「ナチス第三帝国へのキリスト教的抵抗」です。
 重要と思われたことは1933年1月30日、ドイツにおいて成立したナチス政権が、国民的の熱狂の渦にプロテスタント教会を巻き込んだことです。首相となったヒトラーは独裁体制を固め、法的基盤として全権委任法が制定されました。4月にはナチスに不都合な公務員を排除する職業官吏再建法が制定され、官庁の職場からユダヤ人を非アーリア人と呼んで追放しました。ユダヤ人は医師や弁護士の資格も奪われ、ユダヤ系の企業や商店は没収・解体、ドイツ人に安く譲渡されました。
 ナチスはゲルマン人種にふさわしい「積極的キリスト教を代表する」ことを綱領にかかげ、<ドイツ的キリスト者>と呼ばれるグループがその手先となり、教会とナチスの一致を叫び、教会選挙で勝利し、各地の教会指導部を支配するようになりました。<ドイツ的キリスト者>は、「苦悩するイエス」に代わる「英雄的イエス像」や、民族主義的ルター像を鼓吹し、教会から旧約聖書とユダヤ人を排除、無能者・低価値者の差別、ゲルマン至上主義の高揚、平和と国際協調の否定を推し広めました。
 特に彼らが、教会からユダヤ人クリスチャンの牧師や信徒を追放するという暴挙に出た時、これを看過ごすことはできないと考えた人々が<牧師緊急同盟>を結成し、同年末<告白教会>が誕生しました。1934年5月に「バルメン宣言」が採択され、「イエス・キリストこそ神の唯一の言葉」であるとし、教会が聞き、信頼し、服従すべき言葉であることを宣言したのでした。教会は、聖書とキリストを通して明らかにされた神の言葉にのみ聞き従わなければならない、それ以外の不正に人を従わせようとする言葉を信仰によって退けるべきところにこそ教会が存するということを宣言したわけです。現実には多くのキリスト教会もナチズムに協力させられる中で、このような抵抗の宣言を形成し得たことは、戦後、ドイツ教会が、犯した戦争責任と悔い改めの告白をもって再スタートするための土台となりました。